私は昔から三国志ファンです。
私の小さなとき、NHK人形劇の三国志がちょうどやっていました。
単騎、阿斗を救い出す下りと、救いだされた阿斗を投げ出し部下を気遣う劉備がとてもカッコよく感じたものです。
今日の日本経済新聞の朝刊で日本における三国志ゲームを作成した「シブサワコウ
」さんの記事がありました。
思わず読み込んでしまいました。
三国志ファンの意見をゲーム作りに反映させてきたシブサワさんは、私にとって三国志のパイオニアであり、尊敬できる人。
三国天武も、そんなゲームになっていって欲しいな。
平成27年8月3日 日本経済新聞 朝刊より引用
私がプロデューサーを務めてきた歴史シミュレーションゲーム、「三國志」シリーズが、1985年の第1作発売から今年で30年になる。プレーヤーが劉備や曹操といった歴史上の人物になり、三国統一を目指すゲーム。自分がもし歴史上の人物だったら、その時代をどう生きただろう。歴史ファンとともに、思いを巡らせ続けた30年だった。
私と三国志の出合いは小学生のころ。図書館で子供向けの本を、英雄たちの活躍にわくわくしながら読んだ。「自分だったらこうやって三国を統一するのに」。多くのファンと同じように抱いていた妄想が、ゲームの出発点だった。その後も横山光輝の漫画、吉川英治の小説、NHKの人形劇と色々な形で三国志に接してきた。
78年に会社を興し、83年に戦国時代を題材にしたゲーム「信長の野望」を制作、次に「三國志」に取り組んだ。国盗り物語の性格が強い「信長」とは違って、多様な英雄たちが登場する「三國志」は人間ドラマに重きを置いた。「火計」をはじめとした大陸ならではの奇想天外な戦いも「三國志」の魅力だと思っている。
【「正史」の記述に配慮】
日本で人気のある物語の多くは、劉備や孔明が活躍した蜀(しょく)の視点から描いた中国の古典小説「三国志演義」が基になっている。蜀は結局、魏に滅ぼされてしまう。判官びいきな日本人に合ったのだろう。そのため、私たちが作ったゲームも当初10年ほどは「演義」がベース。蜀の武将の能力が高めに設定されていた。
10年ほどたつと、詳しいファンから「歴史書(『正史』)にのっとって、曹操が礎を築いた魏の武将にもっと光を当ててほしい」という声が上がり、正史にも配慮するようになっていった。この30年で、私たちもファンも三国志に関する知識を相当に学んだと思う。曹操配下のそれほど有名でない武将、李典とか楽進あたりの能力値が第1作と比べて上がったのも、そうした事情による。漫画「蒼天航路」など、近年は正史をベースにした文芸作品が増えた。
【届いた声を作品に反映】
30年の間、苦労とは思わず楽しんでゲームを開発してきた。初代発売以来、ファンの学生が「三國志」をこんなゲームにしたい、と野望を抱いて入社してくれるようになった。すべてのアイデアを一作に詰め込むことはできないから、「今回はこれ、次はこれ」といった感じで一作ずつ作り上げてきた。
「曹操や劉備のような君主ではなく、関羽や張飛など一武将としてプレーしたい」など、ファンの方の要望は何度も作品に反映させてきた。戦闘時の「陣形」や、文官同士が言葉で戦う「舌戦」など、実現したアイデアは数え切れない。ゲーム作りは、ファンの皆さんとの共同作業だと思っている。
この30年でゲーム機は驚くほど進化した。今や3Dで映画のような迫力ある映像を見せられる。部隊を四角いコマで表現していた第1作の頃には想像もつかなかった。現在開発中で12月にお目見えする予定の「三國志13」(コーエーテクモゲームス)では、初めて3Dで水上戦や攻城戦を表現。シリーズ最多700人の武将が登場する、30年の最高傑作を作ろうと意気込んでいる。
三国志を題材にしたアクションゲーム「真・三國無双」を2000年に発表してからは女性ファンも増えた。人気なのは呉の軍師、周瑜(しゅうゆ)や、蜀の武将、趙雲(ちょううん)など強くて格好いい人。歴史好きの人は男性も女性も、現実と違う“異世界”を楽しみたいという根本では同じだと思う。
【老いても強い黄忠憧れ】
シリーズのプロデューサー名として使ってきた「シブサワ・コウ」は私が尊敬する実業家、渋沢栄一にちなむ。「コウ」は当時の社名「光栄」から。ともに会社を経営してきた妻から「作品には作った人の名前が必要でしょう」と言われ、「信長の野望」に名前のクレジットを入れたのが始まりだ。長年、謎の人物とされてきたが、99年に私、襟川陽一がシブサワだと公表。今はまだ考えていないが、いつか誰かに襲名してもらうことがあるかもしれない。
三国志で好きな人物は孔明だったが、還暦を過ぎた今は、老いてなお強い蜀の武将、黄忠のようでありたいと願うようになった。今も、ゲームは作るのもプレーするのも楽しい。歴史ゲームのパイオニアとして、何歳まで面白いゲームを作れるか。行けるところまで挑戦したい。